誰でも分かる!修繕積立金の話#2

 マンションの「2つの老い」のうちの一つ、マンション自体の老朽化に対応するには、どうしたらいいでしょうか。

 マンションは大規模で、かつ、戸建て住宅にはない設備が沢山ありますから、いざ修繕をしようとすると莫大なお金がかかります。

 そのため、修繕積立金をきちんと積み立てていないと、必要な修繕ができないか、若しくは、必要な修繕をするために一度に大きな金額を組合員全員から集めなければなりません。

 さらに、ここ2年程度でインフレが急激に進んでいますから、ちゃんと積み立てているつもりでも、積み立ての仕方によっては大規模修繕のときにはやっぱり足りない、ということも十分に起こり得ます。

 そのようなことにならないよう、杜の都マンションの理事長さんとお話しながら、修繕積立金について理解を深めてみましょう。

 今回の第2話は、「均等積立方式であれば絶対大丈夫?」というお話です。

杜の都理事長

ワタナベさん、均等積立方式だからといって必ずしも大丈夫だとは限らないって、どういうことですか?

弁護士ワタナベ

極端な例でいえば、月に専有面積1㎡あたり100円の修繕積立金を均等積立方式で積み立てているマンションは大丈夫だと思いますか?

杜の都理事長

そのマンションの修繕に足りるのであれば、大丈夫なんじゃないですか?

弁護士ワタナベ

では、「そのマンションの修繕に足りる」かどうかはどうやって判断をするのでしょうか。

杜の都理事長

それは長期修繕計画ですよ。長期修繕計画で計画した修繕に足りる費用を積み立てるのが修繕積立金ですから。

弁護士ワタナベ

流石理事長。そのとおりです。そのマンションの修繕積立金が足りているかどうかは、長期修繕計画から見て足りる計画になっているかで判断しなければなりませんね。

杜の都理事長

うちは長期修繕計画を元に、均等積立方式で設定していますから、問題ないですね。

弁護士ワタナベ

そうですね。それで80%程度は大丈夫だと思います。

杜の都理事長

え、80%ですか。残り20%はどうしたらいいんです?

弁護士ワタナベ

杜の都マンションの長期修繕計画は、何年の計画になっていますか?

杜の都理事長

うちは30年ですよ。

弁護士ワタナベ

いいですね。その計画は何年前に作成しました?

杜の都理事長

えーっと、確か初回総会で承認されたと思いますから、9年くらい前になるかと。

弁護士ワタナベ

おっと、危ないですね。

杜の都理事長

え、どうしてですか?30年間の計画なんですから、30年の修繕を済ませてから、次の計画を作ればいいんじゃないんですか?

弁護士ワタナベ

実はそうではないんです。今が2024年ですから、9年前だと2015年ですね。国交省は、建設工事費デフレーター(2015年度基準)というのを毎月公表しているんですが、これが2015年の工事費を100とした場合の現在の工事費の値を示してくれていますので、ちょうどいいですね。

杜の都理事長

そんな数値があるんですね。

弁護士ワタナベ

はい。建設工事費デフレーターの「建築補修」の列を見てみると、2024年2月の建築補修費は124.1になっています。つまり、杜の都マンションの長期修繕計画を作成した時点から、建築補修費は24%も値上がりしている、ということになります。

杜の都理事長

えっ!それじゃあ、9年前の計画に基づいたまま修繕積立金を積み立てても、工事するときには足りないかもしれないってことですか。

弁護士ワタナベ

そういうことになりますね。ですから、国交省は、「長期修繕計画作成ガイドライン」等で、長期修繕計画を5年程度ごとに見直すことを推奨していますし、管理計画認定制度やマンション管理適正評価制度でも、長期修繕契約の作成または見直しが7年以内に行われていることが認定の基準やポイントの加算対象になっているんです。

杜の都理事長

そうだったんですね…そうすると、うちのマンションは修繕積立金を引き上げないといけない、ということになりますか?

弁護士ワタナベ

それも一つの手ですが、やはり、修繕積立金の値上げは組合員にとって負担が大きいですから、別のアプローチも検討する必要があります。

杜の都理事長

別のアプローチとは?

弁護士ワタナベ

単に9年前の長期修繕計画の工事金額を引き上げるのではなく、工事の時期や項目、範囲を見直すというアプローチです。あまり築年数が経っていないマンションに限られますが、最近は建物や材料の性能が良くなっていますから、現状の修繕積立金でできる範囲の、建物の性能を維持し事故を防止する工事、防水や給排水管に関する工事を優先する計画に見直すというのも一つの方法になります。

杜の都理事長

なるほど。工事をどの程度遅らせられるか、といった目安はあるんですか?

弁護士ワタナベ

具体的には各マンションの実際の状況を専門家に診てもらう必要がありますが、修繕周期の一応の参考値が「長期修繕計画作成ガイドライン」別添の「長期修繕計画標準様式の記載例」の「(様式第3-2号) 推定修繕工事項目、修繕周期等の設定内容」に記載されていますので、引用します。

マンション設備の修繕周期1
マンション設備の修繕周期2
マンション設備の修繕周期3
マンション設備の修繕周期4
杜の都理事長

ありがとうございます。うちも、これを参考に長期修繕計画の見直しに着手したいと思います。管理計画認定も申請したいと思っていたので、ちょうどいいです。

弁護士ワタナベ

それがいいですね。長期修繕計画の見直しにはマンパワーが必要になりますから、理事長だけが背負わずに、長期修繕計画の見直しのための委員会を立ち上げて、管理会社と協力しながら多人数で作業を進めた方がよいですよ。

杜の都理事長

分かりました。早速メンバーを募集します。また分からないことがあったら相談させてください。

弁護士ワタナベ

もちろん。いつでもご連絡ください。

 杜の都マンションさんはこれから長期修繕計画の見直しに取り掛かるようです。

 見直した結果、修繕積立金がどうしても足りない場合には、値上げもやむを得ない場合もあります。「一戸建てならそんなに維持費がかからないのに…」と思われるかもしれませんが、一戸建てでも屋根、外壁、防水の修繕をしないと容易にボロボロになりますし、そのための費用を貯めておくには、それなりの積立が必要です。

 また、マンションは、エレベーター、自動ドア、給水ポンプ、ディスポーザー、共用ラウンジ、共有部エアコン等々、一戸建てにはない設備が沢山ありますから、一戸建てと同じ費用では維持が難しいのです。

 そして、壊れてから直すとなると、エレベーターが使用できなかったり、断水したりする期間が長期化してしまいますから、長期修繕計画を定めて計画的に修繕をする必要があるのです。

 しかし、長期修繕計画の見直しにもそれなりの費用も時間もかかります。そのため、「そんな簡単に5年に1回も見直せない」という意見もあるでしょう。

 それでは、長期修繕計画が作成されていない、乃至は、長期間更新されていないマンションにおいて、修繕積立金が十分かどうかはどのようにして判断したらよいでしょうか。

 第3話では、中古マンションの購入を検討している伊達さんの相談から、修繕積立金の判断基準を考えてみたいと思います。

投稿者プロフィール

弁護士・マンション管理士 渡邊涼平
弁護士・マンション管理士 渡邊涼平
仙台弁護士会・宮城県マンション管理士会所属