管理規約と使用細則は、どちらも管理組合のルールですが、変更に必要な決議の成立要件が違います。ここを取り違えると、決議をやり直すことになりますので、まずはその区別から整理します。

1.規約と使用細則は、決議の成立要件が違います

管理規約使用細則
必要な決議特別決議普通決議
決議の要件出席組合員及びその議決権の
各4分の3以上
出席組合員の議決権の
過半数
定足数組合員総数の過半数かつ
議決権総数の過半数の出席
議決権総数の過半数の出席
根拠区分所有法31条1項
標準管理規約47条3項一号
標準管理規約47条2項
同48条一号

 標準管理規約47条3項は、4分の3の特別決議によるものとして「規約の制定、変更又は廃止」を挙げています(一号)。使用細則はここに挙げられていません。

 他方、48条一号は「規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止」を総会の議決事項としています。

 つまり、使用細則の変更は総会の決議を要するが、普通決議で足りるという関係になります。理事会だけで決められるものではない点に注意してください。

 お手元の管理規約が使用細則の制定、変更又は廃止について標準管理規約と異なる定めを置いている場合は、そちらが優先します。実際の決議要件は、必ずご自身の規約でご確認ください。

2.どちらに書くべきか

 「規約に書くか、使用細則に書くか」で迷う場面があります。この点について、標準管理規約のコメントは、次の考え方を示しています。

 使用細則で定めることが考えられる事項として、動物の飼育やピアノ等の演奏に関する事項等の専有部分の使用方法に関する規制、駐車場・倉庫等の使用方法や使用料、置き配を認める際のルール、喫煙に関するルールなどが挙げられています。ただし、このうち専有部分の使用に関するものは、その基本的な事項は規約で定めるべき事項であるとされています(18条関係①)。

ペットの例が分かりやすいところです

 コメントは、犬・猫等のペットの飼育に関して、それを認める、認めない等の規定は規約で定めるべき事項であり、基本的な事項を規約で定め、手続等の細部の規定を使用細則等に委ねることは可能としています(18条関係②)。

 飼育の可否そのものは規約で定め、飼育が可能な場合の頭数・体重・登録手続などは使用細則で定める、という切り分けです。そのため、飼育の可否について使用細則だけで定めていると、効力を争われる可能性があります。

3.一部の区分所有者に「特別の影響」を及ぼすとき

 規約の設定・変更・廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、決議とは別に、その区分所有者の承諾を得なければなりません(区分所有法31条1項後段)。

 標準管理規約も同じ規律を置き、あわせて「その組合員は正当な理由がなければこれを拒否してはならない」としています(47条9項)。

 4分の3の賛成を得れば足りる、という話ではありません。専用使用権や特定の住戸の使用条件に関わる改正では、対象者への説明と承諾の取得を、決議とは別の手続として組み込んでください。

 何が「特別の影響」にあたるかは、個別の事案に応じた判断になります。該当しそうな改正を予定されている場合は、議案を固める前にご相談ください。

 なお、ペットの飼育について規約に何ら定めを置いていなかった管理組合において、新たにペットの飼育を禁止する定めを規約に盛り込んだ際に、規約改正前からペットを飼育していた区分所有者が改正を承諾していないとして争った事案において、裁判所は、ペットの飼育禁止条項を設けることは「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」には該当しないとの判断をしています(東京高裁平成6年8月4日)。

4.改正法への対応が必要な時期です

 改正区分所有法が2026年4月1日から施行されています。特別決議の要件が「組合員総数及び議決権総数の各4分の3以上」から「出席組合員及びその議決権の各4分の3以上」へ変わるなど、決議の枠組みや、招集手続きに関わる重要な改正が多数含まれています。

 あわせて、令和7年10月17日にマンション標準管理規約も改正されました。総会の定足数が「議決権総数の半数以上」から「議決権総数の過半数」に引き上げられています(47条1項)。

5.進め方

  1. 現行規約の棚卸し いつの標準管理規約に準拠しているか、改正法と矛盾する条項がないかを確認します
  2. 改正案の作成 新旧対照表の形にすると、総会での説明が容易になります
  3. 特別の影響の有無を確認 該当する区分所有者がいる場合は、事前に説明し承諾を得ます
  4. 理事会での決議 総会に上程する議案として理事会で決議します
  5. 総会の招集 議案の要領を示して通知します
  6. 総会での決議 定足数と決議要件を満たしているか、その場で確認できるようにしておきます
  7. 議事録の作成と保管 改正内容と賛否の数を明確に記録します

 2の新旧対照表は、手間はかかりますが総会での質問を減らす効果があります。どこがどう変わるのかが一目で分かる形にしてください。

よくあるご質問

使用細則の変更は理事会だけで決められますか。

 決められません。使用細則等の制定、変更又は廃止は総会の議決事項とされています(標準管理規約48条一号)。ただし決議の要件は普通決議で足り、規約のような4分の3の特別決議は不要です。

ペットの飼育を禁止したいのですが、使用細則の変更で足りますか。

 標準管理規約のコメントは、ペットの飼育を認める・認めない等の規定は規約で定めるべき事項としています(18条関係②)。飼育の可否そのものを変更する場合は、規約の改正として特別決議を経るのが安全です。

4分の3の賛成が得られれば、反対する区分所有者がいても改正できますか。

 特別決議の要件を満たしていれば、反対者がいても改正が成立し、改正後の規約が反対者にも適用されます。ただし、規約の変更が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、決議とは別に、その区分所有者の承諾が必要です(区分所有法31条1項後段、標準管理規約47条9項)。承諾を得ないまま行った改正は、その区分所有者との関係で効力を争われる可能性があります。

改正法に合わせて規約を直さないと、どうなりますか。

 改正法の附則2条3項により、「この法律の施行の際に現に効力を有する旧区分所有法の規定による規約で定められた事項で新区分所有法に抵触するものは、施行日からその効力を失う」とされていますので、規約のうち改正法に抵触する条項は失効します。規約の文言はあるけれど、効果はない、という分かりにくい状態が生じることになります。

 また、改正法には多くの新しい制度(国内管理人、所有者不明専有部分管理人、管理不全専有部分管理人、所在等不明区分所有者の除外決定等…)が盛り込まれています。これらの新しい制度は、規約に盛り込まずとも改正法に従った利用はできるものの、規約に盛り込まないと毎回総会決議が必要になったりするなど、機動的な利用が困難な場合があります。

 そのため、これらの新しい制度を適時に機動的に利用できるようにするためにも、標準管理規約を参考に改正を進める必要があります。

管理会社が用意した改正案をそのまま採用してよいですか。

 残念ながら、管理会社の改正では不十分であったり、条項の追加等によって条項番号がズレていたり、条文間の引用がうまくいっていなかったりする場合があります。そのため、少なくとも理事の皆さんで標準管理規約との照らし合わせを行い、必要な条項が盛り込まれているかを確認してください。

 また、ご心配であれば、まずはお近くの地域のマンション管理士にご相談いただくのがよいでしょう。

ご相談ください

 管理規約の改正は、条文の書きぶりよりもどの決議で行うか、誰の承諾が必要かという手続の設計でつまずくことが多い場面です。現行規約の点検、改正案と新旧対照表の作成、総会の運営まで、弁護士・マンション管理士としてご相談をお受けします。

本記事は、建物の区分所有等に関する法律(昭和37年法律第69号)について令和7年法律第47号による改正後(令和8年4月1日施行)の条文、及びマンション標準管理規約(単棟型)並びに同コメント(令和7年10月17日改正)にもとづいています。管理規約の定めはマンションごとに異なりますので、実際の判断はお手元の規約をご確認ください。