令和7年度第2回マンション管理基礎セミナーご質問への回答
令和7年11月1日に開催されました「令和7年度第2回マンション管理基礎セミナー」にて、令和8年4月1日施行の改正区分所有法について簡単に解説をしました。
その際に質問時間を取ることが難しかったため、専用ページからご質問いただけるようにしたところ、以下のご質問を頂戴しましたので、回答します(ただし、渡邊の個人的見解であることはご了解ください。)。
Q:レジュメの12頁「共有名義物件:課題と対策」をご説明の際に「厳密に言えばですが」とおっしゃられたと思います。その通りだと思いますが、一方で「厳密さには欠けるかもしれないが現実的には」と考えた場合にはどのような対策が考えられるかお考えをご提示ください。
A:改正区分所有法40条の「専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数をもつて、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない。」に関するご質問ですね。
共有となっている専有部分の共有者による議決権の行使については、改正法施行後は、管理組合側として厳密さを追及すれば、①総会招集通知時の全部事項証明書、及び、②その全部事項証明書に共有者として記載された者のうち、持分の過半数を満たす者による議決権行使者指定届出書の提出、③本人確認の観点から、議決権行使者指定届出書には実印による押印と印鑑登録証明書の添付を求める、といった非常にハードルの高い手続きを行うことになります。
しかし、このような厳密な手続きは、共有名義物件の区分所有者の総会への参加意欲そのものを削ぐことになってしまう可能性がありますから、管理組合によっては導入しづらい可能性があります。
また、この条文は、主語が「共有者は」となっているとおり、議決権行使者の指定義務を負っているのは共有者自身であり、管理組合ではありません。
そのため、万が一共有名義物件の議決権行使が無効となっても決議への影響が少ないことが見込まれるような総会(例えば、普通決議だけの総会)においては、㋐組合員名簿を作成している場合には組合員名簿を基準とした共有者から、㋑組合員名簿記載の(又は組合員の申告による)共有者の過半数の署名のある議決権行使者指定届を出してもらうことで総会運営をすることも「現実的には」あり得るのではないかと考えます。
ただし、このような簡易な手続きで議決権行使者の指定を認める場合であっても、共有の区分所有者(組合員)に対しては、改正区分所有法40条どおりに「各共有者の持分の価格に従い、その過半数をもって、議決権を行使すべき者一人を定めなければならないので、ちゃんと共有者の方で話し合って持分の過半数の方で議決権行使者を指定してくださいね。持分の半数以下の方で議決権行使者を定めて議決権の行使が無効になっても、無効によって生じる不利益(自らの意思表示を適切にできなかった不利益)は共有者の方自身が負うことになるんですからね。」としっかりと説明をしておく必要があります。
また、管理組合(理事会)としては、このような簡易な手続きによる議決権行使者の指定の場合には、指定された議決権行使者による議決権の行使が無効になる場合も十分にあることを認識し、覚悟しておく必要があります。
他方で、建替え等を目的とするような総区分所有者が母数となる決議や、専有部分に影響を与えるような管理に関する特別決議(建替え等のみならず、共用部分・専有部分の一体更新等)の場合には、決議が無効になることを避けると同時に、共有の区分所有者も自らの専有部分に重大な影響が及ぶ事項について適切に意思表明(議決権行使)ができるように、管理組合(理事会)として努める必要があると考えます。
したがって、このような決議を行う場合には、議決権行使者の指定について上記①②③の厳密な手続きと、管理組合(理事会)による厳密な確認が求められることになると考えます。
そして、これらの中間に位置する、管理規約の改正のような通常の特別決議(法改正後の区分所有者及び議決権の各過半数の出席&出席区分所有者及び議決権の各4分の3以上)については、各管理組合の実情に応じて上記のいずれの方向性とするかについて検討していただくほかないと考えます(中間的な方針として、上記の①②のみを要求する、という方針もあり得ます。)。
個人的には、特別決議の要件が緩和されたことと、適正な総会運営を常に心がけるべきであるとの点を踏まえれば、上記の中間的な手続き(上記①②の要求)程度は常に行うのが適切なのではないかと考えます。
投稿者プロフィール

- 仙台弁護士会・宮城県マンション管理士会所属
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