【2026年4月施行】改正区分所有法への対応は必須!!管理規約を見直すべき「法的な理由」を解説

2026年(令和8年)4月1日より、マンション管理の根幹となる「改正区分所有法」が施行されます 。 今回の改正は、建替え円滑化だけでなく、日常の管理実務や決議方法にも大きく関わる内容です。

「法律が変わっても、うちは管理規約があるから大丈夫」 そうお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、実は改正法の施行に伴い、現在の規約の一部が効力を失う場合があります 。

この記事では、なぜ「管理規約の改正」を強く推奨するのか、その法的な理由と具体的なメリット、そして適切な相談先について解説します。


1. 規約と法律の「ねじれ」が招くリスクとは?

今回の改正で最も実務に影響を与えるのが、規約改正などの重要事項を決める「特別決議」の決議要件の緩和です。

施行日以降、古い規約の効力はどうなる?

現在、多くのマンションの管理規約では、特別決議の要件を「組合員総数および議決権総数の各4分の3以上」と定めています 。 一方、2026年4月1日施行の改正法では、これが「出席者および出席議決権の各4分の3以上」へと緩和されます(※定足数として組合員総数と議決権総数の各過半数の出席が必要)

ここで重要なのが、改正法の附則にある「施行時点で新法に抵触する規約は失効する」という定めです 。 つまり、2026年4月1日以降に招集される総会では、特別機決議の要件として規約に「総数の4分の3」と書かれていても、その条項は当然に無効となり、法律どおり「出席者&出席議決権の各4分の3」で決議を行うことになります 。

規約改正をしないと何が起きるか

もちろん、(当然に無効になるため)規約を変えなくても新法に従って決議することは可能です。しかし、手元の管理規約(ルールブック)と、実際の(法に従った)運営ルールが食い違っている状態は好ましくありません。

  • 組合員の混乱: 「規約にはこう書いてあるのに、なぜ違うルールで採決するのか?」という疑問や不信感を招く恐れがあります。
  • 決議の効力を巡るトラブル: 古い規約の要件に固執する一部の区分所有者と、新法を適用する執行部との間で、決議の有効性を巡るトラブルに発展する可能性があります 。

無用な混乱を避け、円滑な合意形成を行うためには、遅くとも各管理組合の定期総会(通常総会)で規約を改正し、ルールを明確化しておくことが推奨されます。


2. 規約改正で実現する「新しい管理の形」

改正法への対応は、リスク回避だけでなく、管理組合にとって大きなメリットもあります。以下の新制度は、規約に定めることで初めてスムーズに活用できるものが多いためです。

① 「所在等不明者」への対策(決議母数からの除外)

所在も連絡先も分からない区分所有者がいる場合、裁判所の決定を経て、その者を総会決議の母数(分母)から除外できる制度が新設されます 。建替え等の合意形成を阻害する「所有者不明問題」への有力な解決策となります。

② 海外在住者への対応(国内管理人)

海外に住む区分所有者は、日本国内での窓口となる「国内管理人」の選任をすることが可能になります 。管理組合側は、規約で選任を義務付けることもできるため、海外在住区分所有者との連絡不通リスクを低減できます 。

③ 管理不全・所有者不明専有部分への対応

「ゴミ屋敷などで管理が不適切な部屋」や「所有者が判明しない部屋」に対し、裁判所に管理人を選任するよう請求し、管理人が管理・処分を行うことができる制度が始まります 。 管理組合の管理者(理事長)がこれらの管理人の選任請求をするためには、原則として総会決議が必要ですが、規約に定めておくことで「理事会決議」のみで迅速に申立てが可能になります 。

④ 共用部分工事に伴う「専有部分」の工事

共用部分(配管等)の工事と一体で行う必要がある場合、専有部分内の工事も管理組合主導で実施できることが明文化されます 。これを行うには、規約の定めの追加と、既に専有部分の修繕を行った区分所有者と行っていない区分所有者との間の公平な費用負担への配慮が必要となります 。


3. 確実な規約改正のための「3つの相談先」

今回の改正は専門性が高く、既存の規約との整合性を取りつつ改正内容を漏れなく盛り込む必要があります。そのため、改正案の検討は、以下のいずれかの専門家に依頼することを強くお勧めします。

① 管理委託先の管理会社

  • まず相談しやすいのは各マンションで管理を委託している管理会社の担当者(フロントマン)ではないでしょうか。もっとも、管理会社や各フロントマンがどの程度区分所有法の改正や標準管理規約の改正に精通しているかは分かりません。
  • 管理委託契約の中に管理規約の改正業務が入っていれば管理費の中で対応してもらえますが、管理委託契約に入っていない場合には別途費用がかかる場合があります。
  • 管理会社にひな形があっても組合側の実情に合わせたカスタマイズが必要な場合があるため、理事会にて内容の精査が必要になるでしょう。

② マンション管理士(宮城県マンション管理士会など)

  • マンション管理士は、マンション管理の専門家です。宮城県では、「宮城県マンション管理士会」所属のマンション管理士であれば、地域性やマンションごとの個別の事情を汲み取った、中立的で実用的な規約案の作成・助言が期待できます。
  • マンション管理士をお探しの場合、宮城県マンション管理士会のウェブサイトや日本マンション管理士会連合会のマンション管理士検索ページをご活用ください。

③ マンション法務に詳しい弁護士

  • 規約の条文が法的要件を満たしているか、将来的な紛争リスクがないかを厳格にチェックできます。すでに滞納問題や近隣トラブル等の懸案事項がある場合は、紛争解決も見据えて弁護士(マンション管理士資格を併せ持つ弁護士等)へ相談するのも一つの手です。

まとめ

2026年4月の改正法施行は、マンション管理のルールを現代の実情に合わせてアップデートする絶好の機会です。 施行の定期総会にてスムーズに新制度へ移行できるよう、早めに管理会社や専門家へ相談し、準備を進めることをお勧めします。

※なお、2026年4月1日より前に招集手続きがされた総会については、旧法が適用されるため注意が必要です 。スケジュールの詳細についても、ぜひ管理会社・専門家にご確認ください。

投稿者プロフィール

弁護士・マンション管理士 渡邊涼平
弁護士・マンション管理士 渡邊涼平
仙台弁護士会・宮城県マンション管理士会所属